お葬式を終えた後に悩むのが「お墓をどうしようか?」という問題です。
一昔前なら、自分の先祖代々の墓、あるいは嫁いだ先の家の墓に入るのが普通でしたから、特に難しく考えることもありませんでした。
しかし、現代ではそうした考えは少数派になりつつあります。
お墓に関しては、昔ながらの常識は変わりつつあるのです。
お墓問題はなぜ起きたのか?
高度経済成長
日本の社会の歴史に関係してきますが、高度経済成長によって、地方から都会へ若い世代が移住しました。
この時代は、長男は家督を継ぐというのが一般的でしたから、移住した人の多くは次男、三男、・・・といった方たちでした。
そうして都会で家庭を持ち、年齢を重ねていくうちに「お墓問題」にぶちあたるのです。
墓守りの問題
長年都会で暮らしてきた人にしたら、わざわざ自分の地元にお墓をつくると、墓参りや墓守りが大変です。
墓には入れてもらう、でも都会に暮らしているから、墓守りは長男さんに任せます、というのはやはり長男やその家族の立場からしたら不満でしょう。
これに「高齢化社会」という問題が加わって、さらにややこしくなっています。
高齢化による墓守りの負担
私の父は三人兄弟の三男ですが、まさにこの問題にぶち当たっています。
父の一番上の兄は生まれ育った土地でずっと暮らしていますが、独り身で家族がいません。
伯父は病弱で墓の世話もあまりできていないようで、時々父が地元に戻って世話をしているそうです。あと何年これを続けられるのか・・・
妻の墓
さらにいうと、都会へ移住した次男、三男の妻はどのお墓に入るべきなのか?年に数回しか訪れない夫の地元に骨を埋める、ということに抵抗のある方も増えてきました。私の母も、義母(父の母)と非常に仲が悪く、以前「同じ墓に入りたくない」と話していました。
仲が良かったならまだしも、どうせなら自分や家族が住み慣れた土地に墓をつくりたい、と考えるのも自然なことです。ですが、そうした考えを持つ方が増えたことで新たな問題が生じてきました。
「お墓」のインフレ
実は、これがかなり重要な問題です。
地元以外、特に都会に新たにお墓を作ろうと思っても、非常にお金がかかります。
利便性の高い霊園だと、お墓の値段は高くなります。
たとえば東京に青山霊園という霊園があります。
偉人や有名人のお墓があることでも有名ですね。
地下鉄の駅から、徒歩で気軽に立ち寄れるほど利便性が高く、利用者募集の際は応募者が殺到する霊園です。
そんな人気の霊園でお墓を作ろうと思ったら、総額1千万円以上かかってしまうこともあります。(ちなみに墓石+永代使用料で437.6万円~1094万円かかるようです)
もちろん、これは東京だけではありません。地方でも、ちゃんとしたお墓を作ろうと思うと数百万円かかった、というのはザラにあります。お葬式もそうですが、お墓も高い買い物になってしまっているというのが現実です。
「お墓」以外の選択肢が増えてきた
お墓のインフレはじめ、お墓には様々な問題が立ちはだかります。そこで、近年ではお墓以外の方法で故人を供養する方が増えてきています。
納骨堂
寺院が納骨堂を運営しているケースも増えています。お墓よりも安く、しかも管理は寺院がやってくれるということで人気ですね。最近では「マンション型納骨堂」が登場してきました。カードキーをかざすと、自動で遺骨が搬送されてきて、お参りができるというものです。費用も安く、アクセスのいい場所にあることが多いですね。まだまだ都心の一部地域にしかありませんが、これから増えていくものと思われます。
手元供養
遺骨をお墓ではなく、手元で保管することをいいます。一般的なのは、骨壺に入れて保管する方法ですが、中には遺骨を使ったアクセサリーを作って身に着けるという供養方法もあります。
遺骨のアクセサリー、と聞くとギョッとする方もいるかもしれませんが、見た目にもおしゃれなので、言われないと気づきません。
自然葬
遺骨をお墓や納骨堂などではなく、自然に還すという方法をまとめて「自然葬」といいます。「千の風になって」の歌詞の世界観をイメージしてもらうとわかりやすいでしょうか。自然に還すということで、その後の管理費用もいりませんから、遺族への負担も減ります。いくつか種類がありますので見ていきましょう。
樹木葬
シンボルとなる樹木の下に遺骨を埋葬します。他の遺骨と一緒に埋葬する合祀型、個別に埋葬する集合型があります。合祀型のほうが安く済みますが、再び遺骨を取り出すことは不可能です。
散骨
故人の好きだった場所(海や山など)に遺骨を埋葬することです。散骨には、明確な法律上の決まりがないのですが、火葬した後の遺骨を細かく砕いて粉末状にしてから埋葬します。
散骨を禁止している地域もありますから、専門業者と相談の上、行うようにしましょう。
ちなみに遺灰をカプセルに入れ、ロケットで打ち上げるという「宇宙葬」もあります。
まとめ
お墓問題から、供養の方法までまとめました。
勘違いしてはいけないのが、単にわがままでお墓をつくりたくない、と言っているわけではないということです。
墓の世話、費用、・・・そういった問題がある中で、どうやってみんなが納得できる形で故人を供養できるか?という考えから、お墓を建てる以外の新たな供養方法が登場してきています。
終活の一環として、お葬式の後について考えてみるのも大切です。